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刑法総論データベース
法律参考書(法令データベース) 総合索引(目次リンク集)
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体系順データ
リスト:刑法は犯人のマグナカルタ。罰すべきは行為でなく行為者。社会政策は最良の刑事政策。後戻のための黄金の橋
刑法:実質的意義は、犯罪と刑罰に関する法。形式的意義は、刑法典。機能は、規制的機能、保護的機能、保障的機能
規制的機能:犯罪行為に対する規範的評価を明らかにする機能。評価的機能と決定的機能
保護的機能:法によって保護された生活利益を、刑法が犯罪から保護する機能
保障的機能(マグナカルタ機能):刑法が、犯罪と刑罰をあらかじめ規定しておくことによって、国家刑罰権の行使を制約し、国家権力による恣意的処罰から、犯人を含めた個人の人権を保障する機能
刑法の謙抑性:刑法は法益保護を任務とするが、それは可能な限り他の社会的手段に委ねるべきであって、それで不十分な時に限って刑法が介入すればよい、という考え方。内容は、補充性、断片性、寛容性
罪刑法定主義:一定の行為を犯罪とし、これに刑罰を科すためには、予め成文の法律が存在しなければならない、という原則。「法律なければ刑罰なし。法律なければ犯罪なし」という原則
罪刑法定主義の根拠:憲法31条・39条・73条6号但書。民主主義。自由主義。実質的人権保障
罪刑法定主義の内容:罪刑の法定。明確性の原則。内容の適正の原則。類推解釈の禁止。事後法の禁止
明確性の原則:刑罰法規があいまいな場合には、処罰範囲が不明確になり、国民の行動や法的安定性が失われるので、このような刑罰法規は違憲無効である、とする原則
刑罰法規の解釈の方法:文理解釈(言葉の言語学的意味を明らかにすること)。論理解釈(命題の論理的意味を明らかにすること)。拡張解釈(日常用語的意味より広く解釈すること)
拡張解釈:日常用語的意味より広く解釈すること。限界は、形式説(言葉の可能な意味)と実質説(国民の予測可能性)
類推解釈:ある事項につき、直接に法の明文がない場合、これと類似の事項について規定した法文を適用すること
類推禁止説:類推は、裁判官による法の創造であり、刑罰法規を不当に拡張する危険を有するから、絶対に類推解釈は許さないとする説
類推許容説:許される類推と許されない類推との区別こそ重要であり、合目的性と論理的必然性を守る限り、類推解釈は許されるとする説
刑罰法規不遡及の原則(憲法39条):刑罰法規は、その施行の時以後の犯罪に対して適用され、施行前の犯罪に対して、遡って適用されることはない、という原則
刑罰法規不遡及の原則の内容:行為時に適法であった行為を、事後立法で処罰することの禁止。行為時に違法であったが、罰則がなかった行為の処罰の禁止。行為時に規定されていた刑よりも重い刑で処罰することの禁止
刑罰法規の施行時期:特別規定のある場合は、それに基づく。特別規定のない場合は、公布の日から起算して、満二十日を経たときから施行。法令の公布は官報
刑法の場所的適用範囲:属地主義。属人主義。保護主義。世界主義
属地主義(1条):自国の領域内で犯された犯罪に対しては、犯人の国籍のいかんを問わず、自国の刑罰法規を適用する建て前
属人主義(3条):自国の国民によって犯された犯罪については、その犯罪地のいかんにかかわらず、自国の刑法を適用する建て前。適用例は、建造物等放火、私文書偽造、殺人、傷害、窃盗、業務上横領、盗品有償譲受
保護主義(2条、4条):犯人の国籍および犯罪地のいかんにかかわらず、自国又は自国民の利益を保護するのに必要な限りにおいて、自国の刑法を適用する建て前。適用例は、内乱、外患、通貨偽造、公文書偽変造、有価証券偽造、虚偽公文書作成、収賄
世界主義:犯罪地および犯人の国籍の如何を問わず、世界各国に共通する一定の法益を侵害する犯罪に対して、各国がそれぞれ自国の刑法を適用しうるとする建て前
6条:犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものとす
6条の解釈:犯罪後は、犯罪行為後(実行行為終了時から判決言渡時まで)。犯罪後の「法律」は、すべての刑罰法規。刑の変更は、主刑の変更をいい、附加刑の変更は含まない。中間法に対しても6条を適用
限時法:狭義の限時法は、一定の適用期間を限って制定された法律。広義の限時法は、法律内容が一時的事情に応ずる法律も含める
限時法理論:限時法である限り、その有効期間経過後も期間内の行為については常に処罰しうる
8条:この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない
客観主義:刑事責任の基礎を、外部的に表現された犯人の行為にもとめる立場
主観主義:刑事責任の基礎を、犯人の反社会的性格、すなわち、犯罪行為を反覆する犯人の危険性にもとめる立場
現実主義:犯人の社会的危険性の程度のいかんにかかわらず、その行為が、現実に外部に表現されない限り、刑を科し得ないとする考え方
徴表主義:行為をもって、行為者の内部的・心理的事実の徴表されたものとみる。すなわち、犯罪行為は、行為者の危険性を認識する手段として以上の意味をもたないとする考え方
行為者のとらえ方:人間は、素質と環境とに制約されながらも、一定の範囲内では、自己の行為を自律する自由を有する主体的存在と理解する
犯罪の本質:権利侵害説。法益侵害説。義務違反説。法益侵害+義務違反説
行為概念の機能:限界機能。統一機能。結合機能
限界機能:刑法上全く重要でない挙動を、初めから行為ではないとして、刑法的考察の範囲外におくという機能
統一機能:すべての犯罪態様、すなわち故意の作為犯・不作為犯、過失の作為犯・不作為犯、を行為として統一的に包摂する機能
結合機能:構成要件該当性、違法性、責任の3要素を、行為が結合させ、犯罪論体系の一貫性を確保する機能
行為:人の身体の動静(自然的行為論)。意思に基づく身体の動静(有意的行為論)。目的的意思によって統制された目的的活動(目的的行為論)。行為者人格の主体的現実化とみられる身体の動静(人格的行為論)。社会的に意味のある人の態度(社会的行為論)
因果的行為論:行為を、客観的な身体的活動及びそれに基づく因果関係の経過として把握し、行為者の意思の面は責任の問題とする考え方。自然的行為論(平野・前田)と有意的行為論(通説)
目的的行為論(ヴェルツェル、福田):行為とは目的的意思によって統制された目的的活動であるとする見解。批判は、忘却犯・過失・不作為
人格的行為論(団藤・大塚):行為とは、行為者人格の主体的現実化とみられる身体の動静であるとする見解。理由は、人格責任論、忘却犯
法人の犯罪能力否定説(通説・判例)の理由:自由刑だけを処罰する罪もあり、法人が犯人であることを予定していない。法人は身体・意思・目的ももたない。法人は道義的非難になじまない
両罰規定:行政法上、法人処罰の立法技術としては、業務主体たる法人と実行行為者との双方を罰する方式のとられている規定
法人処罰の根拠:無過失責任説、過失責任説、過失推定説。過失責任説は、純過失説と過失擬制説
構成要件:刑罰法規が類型化した、一定の法益侵害又はその危険を生じさせる一定の行為の型。機能は、罪刑法定主義的機能、犯罪個別化機能、違法推定機能、故意規制機能
構成要件理論:犯罪とは構成要件に該当する違法、有責な行為であるとする理論
構成要件の種類:基本的構成要件と修正された構成要件。積極的構成要件と消極的構成要件。閉ざされた構成要件と開かれた構成要件
基本的構成要件:各種の刑罰法規において個々に定められている構成要件
修正された構成要件:行為の発展段階につき(予備・未遂犯)または複数の行為者の関与形態につき(共犯)修正すべき一般的規定によって、基本的構成要件に修正を加えたもの
積極的構成要件:通常の構成要件。犯罪成立の要件を積極的に示した構成要件
消極的構成要件:構成要件に該当すると、犯罪性が否定される形式で規定された構成要件
閉ざされた構成要件(完結した構成要件):刑罰法規において、構成要件要素としての犯罪的行為の特徴が余すところなく記述されている構成要件
開かれた構成要件:構成要件の一部だけが刑罰法規に記述され、他の部分は裁判官によって補充されるべき構成要件
構成要件の要素:客観的構成要件要素と主観的構成要件要素。記述的構成要件要素と規範的構成要件要素
客観的構成要件要素:行為及び行為者の外見的客観的面が構成要件の内容とされるもの。主体、客体、行為、結果、因果関係
主観的構成要件要素:行為者が内心どう思っていたかという心理的なものが構成要件の要素とされるもの
記述的構成要件要素:裁判官がその存在を認定するについて、単に認識的活動を要求されるにすぎない構成要件要素
規範的構成要件要素:認識的活動のみならず、更に規範的、評価的行為を要求される構成要件要素
結果発生の要否による犯罪の分類:挙動犯(単純行為犯)は、結果発生を必要としないもの。結果犯は、結果発生を必要とするもの。結果的加重犯は、1つの基本となる構成要件が実現された後に、更に重い結果が発生することによって、責任が加重されるもの
法益侵害又はその危険性の有無による犯罪の分類:実質犯は、法益の侵害又はその危険性が構成要件の内容とされているもの。形式犯は、抽象的危険の発生をも構成要件上必要としないもの
実質犯:法益の侵害又はその危険性が構成要件の内容とされているもの。侵害犯(現実の法益の侵害を内容とするもの)と危険犯(単に法益侵害の発生の危険を内容とするもの)。危険犯は、具体的危険犯(具体的・現実的危険を要するもの)と抽象的危険犯(一般的・抽象的危険で足りるもの)
結果の発生と法益侵害との関係による犯罪の分類:即成犯は、法益の侵害または危険の発生によって犯罪事実が終了し、法益が消滅するもの。継続犯は、法益侵害が継続する間は犯罪事実が継続するもの。状態犯は、法益侵害の発生によって犯罪事実が終了するがその後も法益侵害の状態が継続するもの
不可罰的事後行為:状態犯において、犯罪成立後の違法状態が、すでに状態犯の構成要件によって評価されつくされている限り、それ自体は他の構成要件に該るようにみえるものであっても別罪を構成しない
行為の客観面による犯罪の分類:作為犯は、構成要件的行為を作為の形式で規定した犯罪。真正不作為犯は、構成要件的行為を不作為の形式で規定した犯罪。表示犯は、構成要件が予定する行為の内容が、行為者の思想の表現にかかわるもの
行為の主体による犯罪の分類:真正身分犯は、身分がなければ何ら犯罪とならないもの。不真正身分犯は、身分がなければ法定刑がそれより重いか又は、軽い、別の犯罪を構成するもの
行為の主観面による犯罪の分類:目的犯は、構成要件上一定の目的が必要とされているもの。傾向犯は、行為者の主観的傾向の表出と認められる行為が罪となるもの。表現犯は、行為者の心理過程ないし心理状態の表出と認められる行為が罪となるもの
実行行為:構成要件に該当する行為。構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為
実行行為の態様:客観面は、作為による直接正犯、不作為犯、間接正犯、原因において自由な行為、未遂犯。主観面は、故意の実行行為、過失の実行行為
不作為犯:想定された一定の積極的動作をしないこと(不作為)によって実現される犯罪。真正不作為犯(初めから不作為の形式で構成要件が規定されている場合)と不真正不作為犯(作為の形式で規定されている構成要件が、不作為によって実現される場合)
不真正不作為犯:作為の形式で規定されている構成要件が、不作為によって実現される場合。作為義務の体系上の地位は、違法性説、構成要件該当性説、保証人説
違法性説(マイヤ−、牧野):不真正不作為犯においては、作為犯の場合と異なり、構成要件段階ではなく、違法性論で初めてその違法性を論じなければならない、とする考え方
構成要件該当性説:作為義務のない者の行為は絶対に構成要件に該当させるべきではないから、作為義務を構成要件要素の一つであると考える説
保証人説:構成要件該当性説をさらに具体的に発展させたもので、結果の発生を防止しなければならない法的義務のある者を保証人とか保証者と呼び、この保証者の不作為だけが構成要件に該当するとする説
作為義務の発生根拠:法令の規定に基づく場合。契約、事務管理など法律行為によって発生する場合。条理・慣習に基づいて認められる場合
条理・慣習に基づいて認められる場合:監護者の地位に基づく作為義務。管理者の地位に基づく作為義務。信義誠実の原則による作為義務。先行行為に基づく作為義務
間接正犯:他人を道具として利用することによって犯罪を実現すること。実行の着手時期は、被利用者行為標準説、利用者行為標準説、個別化説。成立要件は、一方的利用・支配、犯罪を自ら実現する意思
制限的正犯概念:自分の手によって、直接、構成要件を実現した者だけが正犯であると解する立場
拡張的正犯概念:犯罪の実現に何らかの条件を与えた者は、すべて構成要件に該当する実行行為を行うものであり、正犯であると解する立場
間接正犯を肯定する理論的根拠:道具理論。生活用語例説。優越性説。行為支配説。多数説による説明
道具理論(マイヤ−):器具や動物を道具として使用するのと同様に、他人を道具として利用することも正犯となる、と考える理論
行為支配説(平場):目的的行為論の立場から主張される理論であって、行為者が他人の挙動を自己の一部として利用支配する場合には、「構成要件該当の行為支配」があり、正犯となる、と考える理論
間接正犯の成立要件:利用者側の要件は、他人を道具として利用する意思があること、他人を道具として利用する行為があること。被利用者側の要件は、被利用者が道具として、利用者の犯罪意思を実現すること
自手犯:本人自身でなければ犯すことができない犯罪。実質的自手犯(性質)と形式的自手犯(法規)。実質的自手犯は、真正自手犯(間接正犯による犯罪が全く認められないもの)と不真正自手犯(直接正犯となりえない者は間接正犯となりえないもの)
原因において自由な行為(大塚):実行行為が、行為者の責任能力を欠いた状態、すなわち心神喪失状態を利用して行われる場合
原因において自由な行為(通説):実行行為は、原因設定行為。着手時期は、原因設定時。適用範囲は、過失犯・不作為犯
原因において自由な行為(有力説):実行行為は、無能力下での結果惹起行為。着手時期は、無能力下の挙動時。適用範囲は、故意犯・過失犯・限定責任能力
因果関係:構成要件に該当する行為と構成要件に該当する結果との間に必要とされる一定の原因・結果の関係。機能は、客観的帰責の判断
条件関係:因果関係の有無を判断する前提となるもので、「Aという行為がなかったならば、Bという結果は生じなかったであろう」という関係
仮定的因果経過:Aの行為によってBの結果が生じたが、Aの行為がなくともCの行為によってBの結果が生じたであろう場合
条件関係の断絶(因果関係の断絶):先行条件たる行為とは無関係な後行行為によって結果が発生したような場合に、先行行為と結果との間には条件関係がないとすること
因果関係の理論:条件説、原因説、相当因果関係説。原因説は、最終条件説、異例行為原因説、最有力条件説、優勢条件説、動的条件説。相当因果関係説は、主観説、折衷説、客観説
条件説:「Aの行為がなければBの結果なし」という条件関係があれば、因果関係を肯定する立場。純粋条件説と中断論
中断論(因果関係の中断):条件説を前提として、因果関係の進行中に、自然的事実又は第三者の故意行為が介入したときは、因果関係は否定されるとする理論
原因説(個別化説):結果に向けられた諸条件の中から、何らかの基準によって原因となるべきものを摘示し、この原因と結果との間にのみ因果関係を認めようとする理論。理由は、因果関係の不当拡大防止
原因説(個別化説)の原因:時間的に最後に立つ条件(最終条件)。生活上の常軌に反して行われた行為(異例行為原因)。結果に対する最も有力な条件(最有力条件)。結果発生への決定的方向を与えた条件(優勢条件)。結果発生について動力を与えた条件(動的条件)
相当因果関係説:社会生活上の経験に照らして、通常、その行為からその結果が発生することが相当だと認められる場合に、因果関係の存在を認めようとする立場。種類は、主観説、折衷説、客観説
主観説(主観的相当因果関係説):行為者が、行為の当時、認識した事情及び認識しえた事情を相当性判断の基礎事情とする見解
折衷説(折衷的相当因果関係説):行為の時の行為者の立場に立って、一般人が認識しえた事情及び行為者が現に認識していた事情を相当性判断の基礎事情とする見解
客観説(客観的相当因果関係説):裁判官の立場に立って、行為当時に客観的に存在したすべての事情及び行為後に生じた事情でも行為当時に予見可能な事情はすべて相当性判断の基礎事情とする見解
違法性:行為が法に違反すること、すなわち法的に許されないこと。本質は、形式的違法性論と実質的違法性論
形式的違法性論:違法性を、実質的法規に違反することであると解する立場
実質違法性論(通説):違法性を実質的にとらえ、その意味内容を明らかにしようとする立場。結果無価値論と行為無価値論
結果無価値論:行為者の行為にもとづく法益侵害の結果のみを基礎に違法性を考える立場。違法性の本質は、法益の侵害・危険。刑法の機能は、法益保護
行為無価値論(通説・判例):行為者の行った行為の意味を重視して違法性を考える立場。違法性の本質は、法益の侵害・危険+社会規範違反。刑法の機能は、社会倫理規範確立
主観的違法性論:法規範を命令・禁止規範と理解し、責任能力者の行為についてだけ違法評価ができる、と考える見解
客観的違法性論:法を客観的な評価規範と解し、これに客観的に違反することが違法である、と考える見解
主観的違法要素(主観的超過要素):行為者の主観的・内心的要素でありながら、行為に違法性を付与し、又は違法性を強める要素
主観的違法要素の内容:目的犯における目的。傾向犯における主観的傾向。表現犯における心理的過程。未遂犯の故意。既遂犯の故意、過失
可罰的違法性:犯罪として刑罰を加えるに値する程度の違法性
可罰的違法性の理論:行為が形式的にはある構成要件に該当するように見える場合でも、可罰的違法性が備わっていないときは犯罪が成立しないとする理論。根拠は、刑法の謙抑性と実質的違法性論
可罰的違法性論の体系的地位:可罰的違法性を欠く場合、構成要件該当性が阻却されるのかという問題。構成要件該当性阻却説(藤木)と違法性阻却説(通説)
違法性阻却説(通説):可罰的違法性を有しない行為は、構成要件に該当しない場合もあるし、違法性を阻却する場合もある。そのいずれであるかは、刑法規範の解釈によらなければ決められないとする見解
可罰的違法性の判断の基準:結果無価値論では、法益侵害の軽微性。行為無価値論では、第1に法益侵害の軽微性、第2に行為の社会的相当性からの逸脱程度の軽微性
違法性阻却事由:構成要件に該当する行為について、その違法性を排除する事由。一般的正当行為と緊急行為
一般的正当行為:刑法35条に規定される「法令又は正当な業務による行為」及び、超法規的な社会的相当行為
法令行為:直接に成文の法律・命令に基づいて、権利又は義務として行われるべき行為
正当業務行為:社会通念上正当なものと認められる業務行為
正当業務行為の要件:業務が正当なものであること。行為自体がその業務の正当な範囲内であること
社会的相当行為:実質的に考えて正当行為として容認でき、違法性を阻却することが適当だと思われる行為
社会的相当行為の例:自損行為。被害者の承諾による行為。被害者の推定的承諾に基づく行為。治療行為。安楽死。尊厳死。労働争議行為
社会的相当性(ヴェルツェル):歴史的に形成された社会倫理的な共同社会秩序の枠内において許されること
社会的相当性(団藤):法秩序の基底となっている社会倫理的な規範によって許されること
社会的相当性(大塚):現実の国家社会において形成された社会倫理秩序によって許されること
社会的相当性(大谷):人間性を基礎としつつ、歴史的に形成された社会通念を基準として、社会において支配的となっている社会倫理秩序の枠内にあること
自損行為:行為者が自ら自己の法益を侵害する行為
被害者の承諾による行為:法益を侵害される者がその侵害を承諾又は同意している場合の侵害行為
被害者の承諾による行為の違法阻却要件:被害者自ら処分しうる個人的法益。承諾自体が有効。承諾に基づく行為自体が適当
被害者の推定的承諾に基づく行為:もし被害者がその事態を知っていたならば、当然承諾するであろうと考えられる場合、その意思を推定して行う行為
被害者の推定的承諾に基づく行為の違法阻却要件:被害者自身がその侵害を承諾しうる法益。被害者の承諾が推定される。被害者の利益をはかって行う。推定的承諾による行為が社会的に相当
治療行為(大塚):治療の目的で、傷病者本人又はその保護者の承諾又は推定的承諾のもとに、医学上一般に承諾されている方法によって、人の身体を傷つける行為
治療行為(前田):医学上承認された方法により、人の身体を侵襲する行為
治療行為の違法阻却要件:医学上一般に認められた方法。被治療者の承諾。治療を目的
専断的治療行為:推定的承諾にすら反する治療行為(大塚)。患者の意思に反する治療行為(前田)
専断的治療行為の違法阻却要件(緊急避難説、前田):客観的に正当な目的。その目的にとって相当な行為。必要性・緊急性・補充性
安楽死(オイタナジー):死期の切迫した不治の病者が、激しい苦痛に悩んでいるときに、その苦痛から逃れさせるために、その者の生命を短縮させる行為
安楽死(オイタナジー)の違法阻却要件:病者が現代医学の知識と技術からみて不治の病に冒され、しかもその死が目前。病者の苦痛がはなはだしく、何人も真にこれを見るに忍びない程度。専ら病者の死苦の緩和の目的。病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託又は承諾。医師の手によることを本則とし、これにより得ない場合には、医師により得ないと首肯するに足る特別の事情。その方法が倫理的にも妥当
尊厳死(死ぬ権利):植物人間状態を継続させるための生命維持装置を取りはずし、死に至らしめる行為
労働争議行為:労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するもの。違法阻却要件は、労働者の経済的地位の向上を目的、手段・方法が相当
緊急行為:法の保護を受ける余裕のない緊急状態において、例外的に、私人にその法益の保護を委ねることを許される行為。種類は、正当防衛、緊急避難、自救行為
正当防衛(36条):急迫不正の侵害に対し、自己又は他人の権利を防衛するためやむを得ずにした行為
正当防衛の要件:急迫、不正の侵害。自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為
やむを得ずにした行為:具体的事情のもとで、社会通念上、必要性、相当性の認められる行為
対物防衛:物、特に動物による侵害に対する正当防衛
緊急避難(37条):自己又は他人の生命、身体、自由若くは財産に対する現在の危難を避けるため、已むを得ずになした行為で、その行為より生じた害が、避けようとした害の程度を越えないもの。根拠は、違法阻却説、責任阻却説
緊急避難の要件:自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるための行為。補充の原則。法益権衡の原則。業務上特別の義務ある者でないこと
補充の原則:その危険を避けるための唯一の方法であって、他にとるべき途がなかった場合でなければならないこと
法益権衡の原則:避難行為から生じた害が、避けようとした害の程度を越えてはならないこと
防衛の意思・避難の意思:緊急状態のもとで、とっさに身にふりかかった危険を避けようとする単純な心理状態。効果は、加害の意思しかない場合の排除
自招行為:自らの意思で、侵害や危難を招くこと
過剰防衛(36条2項):急迫不正の侵害に対する防衛の程度を超えた行為。防衛行為の必要性または相当性を欠くもの。効果は、刑を減軽又は免除することができる。刑の減免の根拠は、違法性減少説、責任減少説、違法性・責任減少説
過剰避難(37条但書):避難行為がその程度を超えた場合。過剰の内容は、補充性の程度を破った場合、法益の権衡を失した場合
違法性に関する事実の錯誤:違法性阻却事由としての事実が存在しないのに、行為者がその存在を誤信して行為する場合
狭義の誤想防衛:侵害事実の錯誤。急迫不正の侵害がないのに、これがあると誤信して防衛行為をする場合。法的性質は、事実の錯誤説、法律の錯誤説
誤想防衛の類型:狭義の誤想防衛。防衛行為の相当性の錯誤。誤想過剰防衛。防衛行為の対象の錯誤
誤想避難:客観的には緊急避難ではないのに、主観的に緊急避難だと誤認した場合
誤想避難の範囲:現在の危難が存在しないのに存在すると誤認した場合。相当な避難行為をするつもりで、誤って不相当な、特に避難の程度を超えた行為をした場合
誤想過剰防衛:侵害事実の錯誤+防衛行為の相当性の錯誤。急迫不正の侵害がないのに、こうした侵害があるものと誤想して防衛行為に出たが、それが行為者の誤想した侵害に対する防衛として過剰であった場合。過剰性の認識がある場合と過剰性の認識がない場合
自救行為:権利を侵害された者が、法律上正式な手続ではその回復をすることが不可能もしくは困難な場合に、自力でその権利の回復をはかる行為。法的根拠は、超法規的違法性阻却事由
自救行為の違法阻却要件:権利が不法に侵害されたこと。自力救済をしなければ、権利の実現が不能もしくは著しく困難になるような緊急状態にあること。自救行為は、法秩序全体の立場からみて、社会的相当性の範囲内にあること
超法規的違法性阻却事由:構成要件に該当し、かつ刑法の定める違法阻却事由(35・36・37条)にも該当しない行為でありながら、なお違法性を阻却しようとする理論。要件は、目的・手段の相当性、法益権衡の原則、補充の原則
責任:犯罪行為について行為者を非難すること
責任の要素:事実的要素は、責任能力、故意・過失(、違法性の意識)。規範的要素は、期待可能性
責任主義:刑罰を科すには(主観的・個人的)責任がなければならないという原則。「責任なければ刑罰なし」という原則
主観的責任:行為者に責任能力及び故意または過失が具備する場合にのみ、その行為者を非難しうること
個人的責任:行為者の行った個人的行為についてのみ、その行為者を非難しうること
責任の本質:責任の根拠は、道義的責任論、社会的責任論。責任の基礎は、行為責任論、性格責任論、人格責任論。責任の内容たる要素は、心理的責任論、規範的責任論
道義的責任論:通常、非決定論的立場において、自由意思を有する者がその自由な決意のもとに行った行為およびその結果は、行為者に帰属されるべきであり、行為者は、その行為および結果について道義的に非難されうるとする立場
社会的責任論:概ね決定論を基礎として、社会に生存しつつ、社会に対して危険性を有する者は、社会からの防衛の手段としての刑罰を受けるべき法的地位に立たされるのであり、これが責任であると説く立場
行為責任論(意思責任論):個々の犯罪に向けられた行為者の意思に責任非難の根拠を認める立場
人格責任論:行為者の主体性を認める理論的態度を前提として、刑法における責任の基礎を、行為者の人格の中に見出そうとする立場
性格責任論:行為者の危険な性格に社会からの防衛処分を講ぜられるべき意味を見出そうとする立場
心理的責任論:責任の実体は行為者の心理的関係であるとし、責任の要素は、責任能力・故意・過失だとする立場
規範的責任論:責任は行為者に対する、行為についての非難、つまり否定的な価値判断を中核とするものだと考え、責任の要素は、責任能力・故意・過失・期待可能性だとする立場
責任能力:弁別能力と制御能力。行為の是非を弁別し、かつこの弁別に従って自己の行為を統制する能力。意義は、有責行為能力(古典派)と刑罰適応能力(近代派)
心神喪失者(39条1項):精神の障害により、行為の是非を弁別し、またはその弁別に従って行動する能力のない者
心神耗弱者(39条2項):精神の障害により、行為の是非を弁別し、またはその弁別に従って行動する能力が著しく低い者
39条:心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する
41条:14歳に満たない者の行為は、罰しない
故意:罪を犯す意。構成要件的故意と責任故意。種類は、確定故意と不確定故意、事前の故意と事後の故意。内容は、表象説、認容説、蓋然性説、意思説、動機説
故意の内容:表象説(判例)は、犯罪事実の表象。認容説(団藤・大塚・福田)は、犯罪事実の表象・認容。蓋然性説(牧野・前田)は、犯罪実現の高度の蓋然性を表象
38条1項:罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない
構成要件的故意:構成要件に該当する客観的事実の表象・認容
確定故意:具体的な犯罪事実、特に確定的な結果を認識する場合
不確定故意:犯罪事実、特に結果の認識はあるが、それが不確定な場合。種類は、概括的故意、択一的故意、未必の故意
概括的故意:結果の発生は確定的であるが、その個数が不確定な場合
択一的故意:数個の結果のうちのどれかが発生することは確定的であるが、いずれが発生するか不確定な場合
未必の故意(未必的故意):結果の発生自体が確実でないが、発生するかもしれないことを表象し、かつ発生するならば発生してもかまわないと認容する場合
事前の故意(ヴェーヴァーの概括的故意):第1の行為には故意があるが第2の行為には故意がないのに、第2の行為によって第1の行為時に予期した結果が発生した場合
事後の故意:第1の行為には故意がないが、第2の行為には故意があり、第2の行為によって予期した結果が発生した場合
条件付故意:犯罪の実行を一定の条件にかからしめる故意
故意責任の本質:行為者の直接的な反規範的人格態度に対する責任非難
責任故意の要件:構成要件的故意。違法性に関する事実の認識。違法性の意識
38条3項:法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減刑することができる
違法性の意識に関する学説:違法性の意識不要説(判例・前田)。自然犯・法定犯区別説(牧野)。厳格故意説(小野・大塚)。制限故意説(団藤・藤木)。厳格責任説(福田・大谷)。制限責任説(平野)
厳格故意説(違法性の意識必要説):故意は、悪いことを知りつつあえて行為に出るところに責任の根拠があるのであって、違法性の意識がない場合は反対動機が形成されることはなく、責任を問うことができないとする見解。38条3項本文の「法律」は、法律の規定
制限故意説(違法性の意識可能性説):行為者は事実を認識していれば、通常は規範意識に目覚めるはずであり、その結果、反対動機を形成しえたと考えられるにもかかわらず、あえて犯行に出た場合は、そこに直接的な反規範的人格態度がみられるとする見解
責任説:違法性の意識ないしその可能性は、故意とは別個独立の責任要素であるとする見解。厳格責任説(正当化事情の錯誤を法律の錯誤とする立場)と制限責任説(正当化事情の錯誤を事実の錯誤とする立場)
期待可能性:行為当時における具体的事情のもとで、行為者にその違法行為に出ないで、他の適法行為をなし得たであろうと期待しうること。判断基準は、行為者標準説、平均人標準説、国家標準説
錯誤:行為者の主観的な認識と客観的な事実との不一致。事実の錯誤(行為者の表象した事実と実際に生じた事実との不一致)と法律の錯誤(行為者の違法判断と客観的な違法との不一致)
事実の錯誤と法律の錯誤の区別基準:事実の錯誤・評価対象の錯誤、法律の錯誤・評価基準の錯誤(団藤)。事実の錯誤・違法性の意識を喚起できない錯誤、法律の錯誤・反対動機の形成が可能な錯誤(藤木・大谷・前田)。事実の錯誤・構成要件該当事実の錯誤、法律の錯誤・それ以外の事実ないし規範の錯誤(福田)
事実の錯誤:行為者の表象した事実と実際に生じた事実との不一致。構成要件を基準とする分類は、具体的事実の錯誤(同一構成要件内の錯誤)と抽象的事実の錯誤(異なる構成要件間の錯誤)。錯誤の態様による分類は、客体の錯誤、方法の錯誤、因果関係の錯誤
客体の錯誤:行為は認識どおりの客体に向けられたが、その客体の性質をとり違えた場合
方法の錯誤(打撃の錯誤):ねらいのはずれ。行為の方法を誤り、認識した内容と異なる客体に犯罪結果を生じた場合
因果関係の錯誤:行為者が表象したところと異なった因果関係の経過をたどって予期した結果が発生した場合
具体的符合説(平野):行為者の認識した内容と、発生した内容に不一致があれば、故意を阻却するとする立場
法定的符合説:同一構成要件内で、行為者の認識した内容と発生した事実の符合があれば、故意を阻却しないとする立場。但し、異なる構成要件間の錯誤では、構成要件の重なり合う限度で、軽い罪の故意の成立を認める。数故意犯説と一故意犯説
数故意犯説(判例・通説):故意の個数による制限を認めず、1個の故意から複数の故意犯の成立を肯定する見解
一故意犯説(大塚・福田):故意の個数による制限を認めて、1個の故意から1個の故意犯の成立のみを肯定する見解
抽象的符合説(牧野):構成要件の枠にとらわれず、抽象的な符合、すなわち、行為者の表象した構成要件的事実と現実に発生した構成要件的事実とが一致する限度で故意を認めうるとする立場
過失犯の種類:失火罪。過失激発物破裂罪。過失浸害罪。過失往来危険罪。過失傷害罪。過失致死罪
構成要件的過失:客観的注意義務に違反すること。要件は、故意が存在しないこと、注意義務に違反したこと
旧過失論:過失の内容は、結果予見義務違反。体系的地位は、責任レベル。批判は、処罰範囲が拡大する、犯罪個別化機能を失う
新過失論(団藤・大塚・大谷):過失の内容は、結果予見義務違反、結果回避義務違反。体系的地位は、構成要件・違法性・責任レベル。批判は、結果回避義務は不作為犯にも共通の要素であって過失犯固有の要素ではない、処罰を限定したことで公害企業が不処罰になる
認識なき過失:行為者が犯罪事実の認識を欠く場合
認識ある過失:犯罪事実の認識はあるが、その実現についての認容を欠く場合
業務上の過失:通常の過失に対して行為者が、業務上必要な注意を怠ったことによって、犯罪事実を発生させた場合
重大な過失:軽微な過失に対して、行為者の注意義務に違反した程度が著しい場合
許された危険の法理:社会にとって有益ないし必要な行為は、法益侵害の危険を伴なうものであっても、行為者が社会生活上必要な注意義務を遵守して、落度なく行為を行った時は、たとえ法益侵害の結果が発生したとしても、その行為は違法ではないとする法理
信頼の原則:行為者が行為をなすにあたって、被害者又は第三者が適切な行動をとることを信頼するのが相当な時は、たとえ被害者又は第三者が不適切な行動をとって、そのために結果が発生したとしても、これに対して責任を負わないとする原則。背景は、許された危険の法理
信頼の原則の適用要件:相手方が適切な行為に出るであろうという信頼が行為者にあること。その信頼が社会生活上相当であること。相手が適切な行為に出ることを信頼するに足る具体的状況があること
結果的加重犯:1つの基本となる構成要件が実現された後に、更に重い結果が発生することによって、責任が加重されるもの
43条:犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する
未遂犯(43条):犯罪の実行に着手し、これを完成させない場合。形態は、着手未遂と実行未遂(実行行為の終了の有無)、可罰的未遂と不能犯(実行行為の有無)、障害未遂と中止未遂(未遂に終った原因)
着手未遂:行為者の着手した実行行為が終了しなかった場合
実行未遂:実行行為を終了したが結果を発生させない場合
障害未遂(狭義の未遂):たまたま未遂の結果に終った場合。成立要件は、実行行為を開始すること、犯罪の完成に至らないこと
中止未遂:自己の意思により犯罪の完成を止めた場合
実行の着手:実行行為が開始された段階。着手時期は、主観説・客観説・折衷説。客観説は、形式的客観説と実質的客観説。実質的客観説は、実質的行為説(大塚・大谷)と結果説(平野・前田)
実行の着手時期:行為者の意思の危険性がみとめられた時(主観説)。構成要件に該当する行為の一部に着手した時(形式的客観説)。犯罪構成要件の実現にいたる現実的危険性を含む行為を開始した時(実質的行為説)。法益侵害の危険性が具体的程度以上に達した時(結果説)。行為者の計画全体からみて法益侵害の危険性が切迫した時(折衷説)
事実の欠如(事実の欠缺):構成要件の要素の中で、犯罪の主体・客体・手段・行為の状況など、因果関係の部分に属さない要素が存在しないにもかかわらず、行為者が存在するものと誤信して行為に出た場合
事実の錯誤:行為者の表象した事実と実際に生じた事実との不一致。違法な事実は「存在する」のに、存在しないと思った場合
不能犯:行為者が犯罪の完成に至るべき危険性を含んでいない行為によって犯罪を実現しようとする場合。違法な事実は「存在しない」のに、存在すると思った場合
不能犯理論における学説:主観説は、純主観説、抽象的危険説。客観説は、客観的危険説、具体的危険説、定型説
純主観説:行為者が、犯罪の意思をもって行為した以上、常に未遂犯であり、不能犯とはならないとする見解。ただし、迷信犯だけは不可罰
抽象的危険説(主観的危険説、牧野):行為の当時、当事者が認識した事情を基礎にして、客観的見地から危険の有無を判断し、行為がその計画通りなされたならば、結果発生の危険があったか否かで判断する見解
客観的危険説(絶対的不能・相対的不能説、判例・前田):行為者の意図した結果の出現が初めから不可能であったと考えられる時(絶対的不能)は不能犯であり、それ自体としては可能であるが、その状況の下では結果は発生し得ないと考えられる時(相対的不能)は未遂犯とする見解
具体的危険説(大塚・大谷・平野):行為の当時、行為者が特に認識していた事情、及び、一般人が認識し得たであろう事情を基礎とし、客観的見地から、事後予測として結果発生の危険の有無を判断する見解
定型説(団藤):結果発生の危険を含んだ構成要件的行為に該当するか否かで区別
幻覚犯:ある事実が「違法でない」のに、違法であると思った場合
法律の錯誤(違法性の錯誤、禁止の錯誤):ある事実が「違法である」のに、違法でないと思った場合。むささび・もま事件・有罪、たぬき・むじな事件・無罪
中止犯(43条但書):犯罪の実行に着手したが「自己の意思により之を止めた」場合。刑の必要的減免の根拠は、政策説、法律説、併合説。中止の任意性は、客観説・主観説・限定主観説・折衷説。中止行為と結果不発生の因果関係は、必要(判例・通説・平野)と不要(団藤・大塚・前田)
政策説:「引き返すための黄金の橋」を架けることによって、犯罪を防止しようという政策的な理由から、中止犯を寛大に扱うのだという考え方
法律説:中止犯の刑の必要的減免の根拠は、行為そのものの法律的性質に求めるべきであるとする説。違法性減少説(危険減少)と責任減少説(非難減少)
中止犯の法的性格に関する学説:政策+責任減少(団藤・前田)。政策+違法減少+責任減少(大塚)。政策+違法減少(平野・福田・大谷)。違法減少+責任減少(藤木)
自己の意思に因りの解釈(中止の任意性):客観説。主観説。限定主観説。折衷説
客観説(判例・通説・牧野・前田):犯罪を遂げない原因が、社会一般の通念に照らし、通常障害と考えられる性質のものかどうかという一般的、客観的な評価を基準とする説。基準は、一般人+フランクの公式。背景は、責任減少説
主観説(団藤・大塚・平野):行為者の意思と無関係な外部的障害によって行為を止めた時は中止犯とはならない、とする説。基準は、フランクの公式。背景は、違法減少説
フランクの公式:中止未遂「たといできたとしても、なしとげることを欲しない」。障害未遂「たとい欲しても、なしとげることができない」
限定主観説:悔悟、慚愧、同情、憐愍など、広い意味の後悔と言えるような動機による場合だけが中止犯であるとする説。背景は、責任減少説
折衷説:外部的事情を行為者がどう受け取ったか、その受け取り方を客観的に判断すべきだとする説。背景は、責任減少説
「之を止めた」こと(中止行為):着手未遂の場合は、その後の実行を放棄するという不作為。実行未遂の場合は、結果発生防止のための積極的な行為
実行行為の終了時期:主観説は、行為者の犯罪計画ないし認識内容が標準。客観説は、行為の外形が既遂に達し得べき動作かが標準、或いは結果発生の危険が生じたかが標準。折衷説は、外部的な事実だけでなく、その当時の客観的な事情と行為者の主観とを総合して、客観的に判断
予備:実行の着手にいたらない行為であって、犯罪の実行を目的としてなされた犯罪の完遂に実質的に役立つ行為。他人予備は、肯定(判例)、否定(通説)、通貨偽造準備肯定(団藤)、内乱・外患肯定(大谷・前田)
予備の中止:予備行為を開始したが、実行の着手に至る前に自己の意思で止めた場合。刑の減免は、否定(判例)、免除のみ肯定(平野)、既遂刑基準に肯定(大塚・福田)、予備刑基準に肯定(前田)
陰謀:犯罪を実行することについて、2人以上の者が合意すること。処罰対象は、内乱・外患・私戦
共犯の種類:最広義の共犯は、必要的共犯と任意的共犯。任意的共犯(広義の共犯)は、共同正犯と加担犯。加担犯(狭義の共犯)は、従犯と教唆犯
最広義の共犯:2人以上の者が共同して犯罪を実現するすべての場合。必要的共犯と任意的共犯。本質は、犯罪共同説、行為共同説
犯罪共同説:数人が共同して特定の犯罪を行うことを共犯と解する立場。完全犯罪共同説と部分的犯罪共同説
部分的犯罪共同説(団藤・大塚・大谷):犯罪共同説を前提としつつ、2人以上の者が違った犯罪を共同して実行した場合でも、それらの犯罪が同質的で重なり合う性質のものであるときは、その重なり合う限度内で共同正犯が認められるとする説
行為共同説:共犯とは数人が共同の行為によって各自の企図する犯罪を遂行する場合であると解する立場。前構成要件的行為共同説(牧野)と構成要件的行為共同説(平野・前田)
構成要件的行為共同説(やわらかい行為共同説、平野・前田):犯罪行為の一部(構成要件の重要な部分)の共同により共犯の成立が認められるとする説
任意的共犯(広義の共犯):本来単独犯として犯されうる犯罪を、2人以上の行為者が共同して行う場合。種類は、共同正犯、教唆犯、従犯
必要的共犯:刑法各則又はその他特別刑罰法規において、構成要件上当然に、2人以上の行為者の意思の連絡ある行為を予想して規定されたもの。種類は、対向犯、多衆犯、会合犯
対向犯:2人以上の行為者が相互に対向して行為をすることがその成立要件とされる犯罪
多衆犯(集合犯、集団犯):犯罪の成立上、同一の目標に向けられた多数者の共同行為が必要とされる犯罪
狭義の共犯(加担犯):正犯を通してその犯罪の実現に加わったことによって、第二次的な責任を課せられるべきもの。教唆犯と従犯。処罰根拠は、責任共犯論、違法共犯論
責任共犯論:共犯は正犯を堕落させ、罪責と刑罰に陥れたが故に処罰されるとする見解
違法(不法)共犯論:共犯者は正犯者による不法の実現に寄与したことによって処罰されるとする見解。種類は、狭義の違法共犯論、因果的共犯論
狭義の違法(不法)共犯論:共犯者は、正犯に構成要件に該当する違法な行為(実行行為)を行わせた、あるいは手助けしたため処罰されるとする見解
因果的共犯論(惹起説):共犯者は、正犯を通じ、間接的に法益の侵害またはその危険を惹起したため処罰されるとする見解。種類は、純粋惹起説、修正惹起説、混合惹起説
純粋惹起説(独立性志向惹起説):共犯が処罰されるのは、共犯者そのものが法益を独自に侵害するからであるとする見解
修正惹起説(従属性志向惹起説、平野・前田):共犯は、正犯の法益侵害またはその危険性をともに惹起したから処罰されるのであり、共犯の違法性は正犯の違法性に基づくとする見解
混合惹起説(従属的法益侵害説、大塚・大谷):共犯は正犯を通じて間接的に法益を侵害しているから処罰されるとする見解
実行従属性:従属性の有無。狭義の共犯成立の要件として、正犯が現実に実行行為をしたことが必要かという問題。学説は、共犯従属性説、共犯独立性説
共犯従属性説(判例・通説):狭義の共犯が成立し、または、可罰性を帯びるための前提として、正犯者が一定の行為を行ったことが必要であるとする立場
共犯独立性説(牧野):狭義の共犯も、共犯者の固有の行為によって成立し、かつ、可罰性を帯びるとする立場
要素従属性:従属性の程度。教唆犯・従犯が成立し、かつ可罰性を有するためには、正犯がどの程度の行為をすることが必要か、という問題。従属形式は、最小従属性説、制限従属性説、極端従属性説、誇張従属性説
最小従属性説:狭義の共犯が成立するためには、正犯の行為が構成要件に該当すれば足りるとする見解
制限従属性説(通説):狭義の共犯が成立するためには、正犯の行為が構成要件に該当し、かつ違法性を備えることを要するとする見解
極端従属性説(判例):狭義の共犯が成立するためには、正犯の行為が、構成要件該当性、違法性、有責性のすべてを具備する必要があるとする見解
誇張従属性説:狭義の共犯が成立するためには、正犯の行為が、構成要件該当性、違法性、有責性のすべてを具備した上に、更に一定の可罰条件をも備えていることを要するとする見解
共同正犯:2人以上共同して犯罪を実行した場合。要件は、共同実行の意思(共同者が共同して実行行為を行おうとする意思の連絡)と共同実行の事実(2人以上の行為者が共同して実行行為を行うこと)
60条:2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする
共謀共同正犯:2人以上の者が犯罪の実行を共謀し、そのうちのある者が共同の意思に基づいて実行した時、自らは実行しなかった他の共謀者も全員共同正犯とする、という理論において、実行行為を分担しなかった共謀者のこと
共謀共同正犯に関する学説:共謀共同正犯否定説。包括的正犯説。共同意思主体説。間接正犯類似説。優越支配共同正犯説
共謀共同正犯否定説の根拠:正犯は実行行為を行う者、共同正犯も正犯の一種、共謀共同正犯は実行行為がない
包括的正犯説(平野・前田・大谷):正犯概念と実行概念を分離する立場。重い処罰に値するものが正犯であるとして、実行行為を行っていない共謀共同正犯も正犯の一種である共同正犯となりうるとする立場
共同意思主体説:共同正犯を共犯と解する立場。数人の共謀によって同心一体的な共同意思主体が成立し、その中の一人の実行は、共同意思主体の活動そのものであって、責任は共同意思主体という団体を媒介として各人に帰属するとする立場
間接正犯類似説(藤木):実行概念を実質化する立場。自ら実行しない共謀者も、実行担当者に心理的拘束を及ぼし、実行担当者を一種の道具として利用して犯罪を実現したとみられる場合は、間接正犯と同様に正犯として扱うことができるとする立場
優越支配共同正犯説(大塚):共謀共同正犯は否定するが、命令を下す者が命令を受ける者に対して、一定の社会的関係において圧倒的に優越的地位に立っていることによって、心理的拘束を与え得る状況にある場合、優越支配共同正犯として、命令者にも共同正犯を認め得るとする立場
共謀:2人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議
教唆犯(61条):人を教唆して犯罪を実行させること。他人を教唆して犯罪の決意を生ぜしめ、その決定に基づいて犯行を実行させること
教唆の未遂:教唆行為は行われたが、被教唆者は何もしなかった、ないし実行の着手に至らなかった場合
未遂の教唆:教唆者が、被教唆者の実行行為を、初めから未遂に終わらせる意思で教唆する場合(大塚)。教唆行為は行われ、それに基づき被教唆者が実行に着手したが、結果発生に至らなかった場合(前田)
61条:人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする
間接教唆(61条2項):教唆者を教唆した場合
再間接教唆(順次教唆):間接教唆者をさらに教唆する場合。不処罰(団藤・福田)。処罰(判例・平野・前田・大谷)。
片面的教唆:教唆する者と、される者との間に全く意思の連絡がない場合。不処罰(通説・団藤・平野)。処罰(大塚・福田・大谷・前田)
62条:正犯を幇助した者は、従犯とする。従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する
従犯(幇助犯):正犯を幇助した者。正犯者がその犯罪を実行するにあたり、その実行行為を容易ならしめること。幇助の因果関係は、促進説、結果変更説、不要説
見張り行為の性格:共同正犯(小野)。共謀共同正犯(判例)。従犯(団藤・大塚)。実質的客観説(平野・前田・大谷)
間接従犯(間接幇助):従犯をさらに幇助すること。不処罰(団藤・大塚)。処罰(判例・平野・前田・大谷)。
片面的従犯:幇助者が一方的に正犯者の行為を幇助すること
片面的共同正犯:相互的な意思の連絡なく、ただ一方的な関与の意思をもって他人の犯罪の実行に関与した場合。肯定(牧野・平野)と否定(判例・通説)
承継的共同正犯:ある者(先行者)が実行行為の一部を終了した後、他の者(後行者)が前者との間に意思の連絡を生じ、実行行為を共同した場合。肯定(福田)、否定(牧野・前田)、一部肯定(平野・大塚・大谷)
承継的従犯:正犯の実行行為の一部終了後にその犯罪に加功し、事後の実行を容易にする場合
予備の共同正犯・教唆・幇助:否定(大塚)。独立予備罪肯定(団藤・福田)。肯定(平野・前田・大谷)
結果的加重犯の共同正犯:基本的犯罪について共同正犯関係にある者は、他の者が発生させた重い結果についても共同正犯を認めるかどうかの関係
共犯関係からの離脱:共犯関係から離脱した者には、たとえ他の共犯者の犯行を阻止することができずに結果が生じてしまったとしても、何らかの責任の軽減がなされるべきではないか、という問題。実行の着手前の離脱(共謀関係からの離脱)と実行の着手後の離脱(共同正犯関係からの離脱)
共謀関係からの離脱:共謀共同正犯における共謀者中の一部の者が、その共謀共同正犯の実行着手前に共謀関係から離脱したときは、その後に他の共謀者が実行した行為について責任を負わないとする理論
共同正犯関係からの離脱:共同正犯者中の一部の者が、実行行為の途中でその実行を中止し、かつ、他の共同者の実行をも阻止しようと努力したが阻止しきれずに結果が発生してしまった場合
教唆犯における錯誤:教唆者の認識した事実と正犯によって実現された結果との間に不一致がある場合
異なる共犯形式にわたる錯誤:ある共犯形式で犯罪を実現させようとしたが、他の共犯形式による結果が生じたような場合
65条:犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する
65条1項と2項の関係:1項・真正身分犯、2項・不真正身分犯(判例)。1項・身分犯における共犯の成立、2項・不真正身分犯における科刑(団藤・大塚)。1項・違法身分、2項・責任身分(平野)
刑法65条の身分:すべて一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態
罪数:犯罪の個数。種類は、一罪(単純一罪、包括的一罪、法条競合)と数罪(科刑上一罪、併合罪、単純数罪)。罪数を定める標準は、行為標準説、法益標準説、犯意標準説、構成要件標準説
一罪(本来的一罪):1つの構成要件によって、1回に評価される事実。種類は、単純一罪、包括的一罪、法条競合
単純一罪:1行為・1結果で、罰条の重なりの全くない場合
構成要件的評価の同質的包括性:1回の構成要件的評価は、同一構成要件に数回該当するように見える事実をどこまで包括しうるか、という問題
広義の包括的一罪:法条競合には含まれないが、一罪と評価されるものの総称
狭義の包括的一罪:一個の構成要件が、相互に手段・目的または原因・結果の関係に立つ数種の行為を含む場合に、行為者が同一法益の侵害に向けてそれらの行為を順次行い、各行為が行為者の一つの人格態度の発現とみられるときは、その構成要件に包括される一罪と解すること
接続犯:それぞれが、ある一個の構成要件に該当するとみられる数個の行為が、時間的、場所的にきわめて接近した状況のもとで、同一の法益の侵害に向けて行われ、かつ、行為者の一つの人格態度の発現とみられる場合
連続犯:接続犯ほど各行為の間の時間的・場所的な接着性は厳密ではないが、ある行為者が同一構成要件にあたる数個の行為を連続して行った場合で、それらがいずれも同一法益の侵害に向けられた一つの人格態度に基づくものと認められる場合
構成要件的評価の異質的包括性:1回の構成要件的評価には、異なった数個の構成要件に該当するように見える事実を、その中のある構成要件によってどこまで包括しうるか、という問題
法条競合:1個の行為について、数個の構成要件が外観的に競合するように見えるが、実はそれらの中のいずれか1個の構成要件だけが適用され、他は排除されるべき場合。種類は、特別関係、吸収関係、補充関係、択一関係
特別関係:1個の行為が、一般法とともに特別法にも該当するようにみえる場合であり、特別法が一般法を拒否。例は、加重・減刑類型と基本的犯罪類型
吸収関係:1個の行為に適用されるようにみえる数個の構成要件の中、あるものが他のものに比して完全性を備えている場合には、完全法は不完全法を拒否。例は、強盗・強姦と暴行・脅迫、既遂と未遂、殺人と着衣損傷
補充関係:1個の行為が、同時に基本法と補充法の構成要件とに該当するようにみえるとき、基本法は補充法を拒否。例は、傷害と暴行、器物損壊とその他の毀棄、未遂・既遂と予備
択一関係:1個の行為に、同時に適用されるようにみえる数個の構成要件が、相互に、両立しがたい関係にたつときは、そのいずれか一方のみが適用され、他のものの適用は排除。例は、横領と背任
54条1項:1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する
科刑上一罪(54条):本来は数罪であるが、刑法の規定する一定の要件にあてはまるため、科刑上は一罪とされる場合。観念的競合と牽連犯
観念的競合(54条1項前段):一個の行為によって数個の構成要件に該当する場合、又は同一構成要件に数回該当する場合
観念的競合の「一個の行為」:法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価をうける場合
牽連犯(54条1項後段):数個の行為がそれぞれ各別の構成要件に該当するが、それらの間に、手段・目的または原因・結果の関係がある場合
併合罪(45条):確定裁判を経ない数罪。処分は、吸収主義(46条)、加重単一刑主義(47条)、併科主義(48条・49条)
併合罪の処分:吸収主義(46条)は、死刑・無期刑。加重単一刑主義(47条)は、有期の懲役・禁錮。併科主義(48条・49条)は、罰金・拘留・科料・没収
かすがい現象:A罪とB罪とが、本来併合罪であっても、そのそれぞれがC罪と科刑上一罪の関係にたつ場合には、A罪とB罪も科刑上一罪の関係にたつ、というもの
刑罰:犯罪に対する法的効果として、国家によって犯人に科せられる一定の法益剥奪
法益による刑罰の分類:生命刑、身体刑、自由刑、名誉刑、財産刑。生命刑は、死刑。自由刑は、懲役、禁固、拘留。財産刑は、罰金、科料、没収
それ自体独立に科しうるか否かによる刑罰の分類:主刑は、それ自体を独立に科しうる刑罰、没収以外の刑。附加刑は、主刑に附加してのみ科しうる刑罰、没収
没収:物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる処分。任意的没収(19条)と必要的没収(197条の5)。性格は、刑罰的性格と保安処分的性格
任意的没収の要件(19条):有体物であり、犯人以外の者に属しないもので、原物が存在し、拘留・科料のみに該る罪でなく、犯罪組成物・供用物・生成物・取得物・報酬・対価物であること
19条1項各号の対象物:犯罪組成物は、実行行為の不可欠な要素をなす物。供用物は、犯罪の実行に不可欠な要素ではないが、実行行為の用に供した物、又は供しようとして準備した物。生成物は、犯罪行為によって作り出された物。取得物は、既に存在している物であって、犯罪行為によって取得した物。報酬は、犯罪行為の報酬として得た物。対価物は、生成物・取得物の対価として得た物
197条の5:犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する
追徴(19条の2、197条の5):没収が不可能な場合に、それに代るべき一定の金額を国庫に納付すべきことを命ずる処分
刑の加重・減軽事由:法律上の加重事由は、併合罪加重、累犯加重。法律上の減軽事由は、必要的減軽事由、任意的減軽事由。裁判上の加重事由は、選択刑を情状により併科する場合など。裁判上の減軽事由は、酌量減軽
累犯加重(56条、57条):要件は、前犯が懲役又はこれに準ずる、前犯から5年以内に後の犯罪、後の犯罪も有期懲役。刑は、長期2倍
自首(42条1項):犯人が捜査機関の取調をまたずに、自発的に自己の犯罪事実を申告し、その処分を求める行為
首服(42条2項):親告罪の犯人が、自己の犯罪事実を告訴権者に告白し、その告訴に委ねること
66条:犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる
加減例(68条):死刑の減軽は、無期又は10年以上の懲役もしくは禁錮。無期の懲役又は禁錮の減軽は、7年以上の有期懲役又は禁錮。他2分の1減
加重減刑の順序(72条):再犯加重。法律上の減刑。併合罪の加重。酌量減刑
自由刑の執行:自由刑の刑期は裁判確定の日から起算。受刑の初日は時間に関係なく全1日。放免は刑期終了の翌日。未決勾留の日数は全部又は一部を本刑に算入し得る
刑の執行猶予:刑を言渡すにあたって、犯情により必ずしも刑の現実的な執行を必要としない場合に、一定の期間その執行を猶予し、執行期間を無事に経過したときは刑罰権の消滅を認める制度。目的は、消極的目的(弊害回避)と積極的目的(再犯防止)。猶予期間は、1年以上5年以下
初めての執行猶予の要件(25条1項):前の懲役・禁錮から5年経過。宣告刑が3年以下の懲役若くは禁錮又は50万円以下の罰金。情状
再度の執行猶予の要件(25条2項):懲役・禁錮の執行を猶予された者。宣告刑が1年以下の懲役・禁錮。情状に特に酌量すべきものがある。保護観察に付されていない
保護観察:犯人を刑務所その他の施設に収容せず、自由な社会で一定の守るべき事項を命じ、これを守るように指導し、必要なときには援護を与え、その改善・更生を図る処分。初めての執行猶予は任意的、再度の執行猶予は必要的
執行猶予の必要的取消事由(26条):執行猶予期間中に、更に罪を犯し、禁錮以上の刑。執行猶予の言渡前に犯した罪につき、禁錮以上の刑。猶予の言渡前5年以内に、他の罪につき禁錮以上の刑。いずれも執行猶予除く。
執行猶予の任意的取消事由(26条の2):執行猶予期間内に、更に罪を犯し、罰金刑。保護観察に付されている者が遵守事項を遵守せず、情状が重い。猶予の言渡前、他の罪につき禁錮以上の刑に処せられ、執行猶予に付されていることが発覚
仮釈放(28〜30条):自由刑の執行を続ける必要がないと認められる場合に、刑期または留置期間満了前に条件付で、受刑者を釈放する制度。仮出獄(懲役または禁錮の場合)と仮出場(拘留または労役場留置の場合)
刑罰の消滅:一たん発生した個別的刑罰権が、何らかの理由によって消滅すること
恩赦:司法機関の権限によらないで、国家的刑罰権を消滅させ、又はその効力を減殺する制度。種類は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除、復権
刑の時効期間(31〜34条):死刑30年、無期の懲役・禁錮20年、10年以上15年、3年以上10年、3年未満5年、罰金3年、拘留・科料・没収1年
保安処分:行為者の危険性に着眼し、それに対する社会的保安をはかるとともに、あわせて本人の改善・治療を目的とする国家処分。対人的保安処分と対物的保安処分
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